加工依頼品製作(学生フォーミュラ活動の支援)

category Case Studies
2020/01/23

ものづくり教育研究センター業務のひとつに 加工依頼品製作があります. 加工依頼が来ると,まずは依頼主と相談.加工性や求められる機能を考慮し,設計を煮詰めてから加工に入ります.

今回の依頼主は学生フォーミュラです.依頼品はセンターロックナット.ホイールをハブに固定するためのナットです.写真は前大会のもので,二面幅は56mmです.

大会時には表面のコーティングが剥離したものを使用してはいけないらしいのですが,使用しているとやはり剥離してくるようです.となると大会直前に新品を装着し,大会と次大会までの練習走行で1セット(4個)消費することになります.今回の依頼では20個,5年分を加工してほしいとのことでした.

なぜコーティングが剥離するかというと,ナットを締め付けるときに工具との接触部に局所的に大きな力が掛かるからでしょう.剥離を防ぐためには締め付ける力を減らすか,接触面積を増やせば良いかと思われます.ただねじの規定トルクの関係上締め付ける力を減らすことはできません.

下の写真はナットを締め付ける際に使用するソケットレンチです.

12角のソケットレンチです.あれ…?接触面積増やせそう?

というわけで,相談して設計変更.試作したものが下の写真です.

ナットも12角にして,ソケットレンチとの接触面積を増やしました.これでコーティングの剥離を抑えられるはずです.ただ少し重くなってしまいました.

12角にした結果,ねじ部の厚みが少し増しています.ならば二面幅を減らして軽量化できるのでは….ナットの高さももう少し減らせそう.

ということで,今度は使用するソケットレンチを二面幅54mmとすることにし,さらに設計変更.

これで元の6角ナットよりも軽くなりました.

というわけで,今回はこの二面幅54mm,高さ23mmのものを20個製作しました.

….

ちょっと材料が余ったので更に試作.

少しでも軽く,とのことで高さを1mm減らしてみました.ハブの形状との関係で,これ以上高さを低くすることは難しそう.

もう1種試作.このナットに合わせてハブを再設計/製作する前提です.とにかく小さくしたかったので,18角で二面幅52mmにしてみました.市販のソケットレンチは12角までですので,ソケットレンチもこちらで製作することとなります.

高さは16mmになっています.重量は40.8g.最初の6角のものは70.1gでしたから,大分と軽くなりました.ハブの設計変更が待ち遠しいです.

集合写真.